お役立ち情報-法人税務
 

  • 外国法人の恒久的施設への課税リスク

外国法人は国内源泉所得に対して日本で課税されることになりますが、外国法人が日本に保有することとなる恒久的施設(Permanent Establishmentを略してPE)の種類によって、課税所得の範囲も異なります。恒久的施設とは、支店や工場、建設現場などの固定的な施設だけでなく、外国法人に代わって契約を締結する権限のある者(代理人PE)も含まれますが、この代理人PEの認定には、事実関係を恒久的施設の要件にあてはめて判断することになるとは言え、実際の現場においてそれらの要件を念頭におきながら業務を進めることは難しく、特に恒久的施設からは除かれる「準備的・補助的活動」のつもりが、その範囲を逸脱した活動を恒常的に行っているようなケースは税務上のリスクが極めて高いと言えます。2014年の税制改正に続いてBEPSプロジェクトやOECDモデル条約の改定を受けて再度2018年において恒久的施設の定義を改正しており、恒久的施設の定義をより明確にしたうえで外国法人への課税を強化しようとする姿勢が伺えます。

(恒久的施設に関する国税庁HPへこちら)

(BEPSプロジェクトに関する国税庁HPはこちら)

 

  • 海外関係会社からのリチャージ費用の損金性

日本に進出して間もない外資系企業にとってリソースが限られている状況では管理業務などを海外親会社や地域統括会社などに頼らざるを得ません。日本子会社は、海外親会社や地域統括会社からは経営管理料として、管理業務に関わる人件費や減価償却費などを日本子会社にリチャージされることとなります。リチャージ費用を日本の法人税の計算において損金として控除できるためには、単に請求書があるだけでなく管理業務の実態性を証明する必要がありますが、一般的には管理業務に関わる部局の人件費や減価償却費を積み上げる算出過程が必要となります。 

リチャージ費用の中には、日本子会社の役員として海外関係会社から出向した従業員の給与賞与が含まれていることもありますが、日本法人の役員であることからリチャージされる給与についても法人税法上の役員報酬の定期同額給与の要件に合致しない場合には、損金算入できないことになりますので、他の費用とは別枠で算出して定期同額を維持することが必要となります。なお、リチャージする金額が外貨建てであっても外貨で同額であれば定期同額給与と取り扱われます。

(定期同額給与に関する国税庁HPはこちら)

 

  • 海外関係会社への借入金利息に対する過少資本税制の回避

資金調達方法としては増資か借入の選択がありますが、増資に対する配当は損金算入できないのに対して借入金に対する利子は損金算入できるため、この資金調達方法の違いを利用した意図的な課税所得の矮小化を防止するための制度が過小資本税制であり、日本子会社の海外関係会社からの借入金が資本金の一定割合を超えた場合に超えた部分の利子の損金算入を認めないというものです。

外資系企業の対策としては借入金の対資本金割合を定期的にモニターして事業年度末には損金不算入額を発生させないように検証をしておく必要があります。なお、借入金には海外関係会社が保証する国内金融機関からの借入も含むこととなりますので注意が必要です。

過少資本税制に関する財務省HPはこちら

 

  • 消費税課税事業者選択による消費税の還付

設立初期には、売上規模が小さい割には設備投資額が高いなど、仮受消費税より仮払消費税が多くなるものの、基準年度が存在しない、あるいは基準年度の売上が1000万円を超えないことなどから課税事業者とはなれず仮払消費税の還付機会を逃してしまうことになります。そこで設立事業年度から課税事業者をあえて選択して仮払消費税の還付申告を行うことができます。

ただし、この選択は2年間継続することが要件となっていますので、設立2期目の売上高の見込み額によっては益税となるはずだった消費税を納付することになりますので事前のシミュレーションが重要です。

課税事業者選択に関する国税庁HPはこちら

 

  • 課税期間特例選択による消費税還付の早期化

消費税の申告期限は課税期間(=事業年度)の終了から2か月以内ですが、3か月又は1か月ごとに課税期間を区切って申告書を提出する特例を選択することができます。海外法人向けに役務提供事業を行うような法人は輸出免税の割合が高く、国内売上に係る消費税額を国内仕入に係る消費税額が上回ることで消費税の還付を受けることができますので、この特例を選択して還付を早めることでキャッシュフローを良化することが可能です。ただし、特例の選択にあたっては3か月又は1か月ごとに申告書を作成提出する事務負担を考慮にいれる必要はあります。

課税期間に関する国税庁HPはこちら

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