外国法人や非居住者が国内源泉所得を有する場合の課税方法は、①確定申告②源泉徴収で完結③源泉徴収後に確定申告の3通りとなりますが、②と③の源泉徴収は国内源泉所得の支払者の義務となりますので、源泉徴収の対象となる所得が何であるかを正確に理解しておかないと源泉徴収漏れとなってしまい、税務当局からのペナルティーを課されるだけでなく、受取側の外国法人や非居住者に対して源泉徴収分の返金要請など思わぬトラブルが生じることとなりますので十分注意が必要です。
源泉徴収の対象となる所得は以下の通りですが、これらの所得に該当するのかどうか契約書や取引実態について吟味する必要があります。
① 人的役務の提供事業の対価
② 国内不動産の賃貸料等
③ 債権利子等
④ 配当等
⑤ 貸付金利子
⑥ 使用料等
⑦ 事業の広告宣伝のための賞金
⑧ 生命保険契約に基づく年金等
⑨ 定期積金の給付補填金等
⑩ 匿名組合契約等に基づく利益の分配金
外国法人や非居住者に対して国内源泉所得を支払う際には、復興特別税を含めて20.42%(債権利子等と定期積金の給付補填金等については。15.315%)で源泉徴収する必要があります。
日本と各国(2020年3月現在76カ国)との租税条約の規定により、外国法人や非居住者の国内源泉所得に対する日本での課税を減額や免除することができます。減免を受けるためには受取側の外国法人や非居住者に、支払側の法人を通して申請書を税務署に提出する義務を課していますが、実務としては、支払側の法人が主体となって申請書の作成から提出までを行い、源泉徴収義務の減免を受けることとなります。
租税条約による減免を受けることができるにもかかわらず、所得税の規定による源泉徴収税を納税してしまった場合の救済手続が源泉所得税の過誤納還付申請です。申請書の作成はそれほど複雑ではないものの、申請理由として事実関係を明確に示す必要があり、証拠書類の準備や税務署との事前協議など還付されるまでに数か月かかる場合もあります。
海外の取引先からの売上代金等の支払を受ける際に現地国の税法や租税条約の規定により源泉所得税などが課税された場合に、日本では全世界所得が課税されることで二重課税が生じてしまいます。このような二重課税を排除する方法として外国税額控除が認められていますが、その適用にあたっては、確定申告に控除額の計算明細書や現地国の納税証明書などの添付が必要があるだけでなく、現地国と日本での事業年度や申告納税時期にずれがあることで、納税額が確定するまでは控除限度額だけを計算して申告しておく必要があるなど、手続を正確に理解していないと二重課税を排除できないこととなるため注意が必要です。